遅れてきたクリスマス




俺には二つの名前がある。
候隆と裕。
どっちも本当の俺であり、どっちも本当の俺ではない。



― 遅れてきたクリスマス ―



街が冬の匂いに包まれ始めると、毎年決まって聞かれる質問がある。
「今年のクリスマスの予定は?」
「理想のクリスマスの過ごし方は?」

この質問をされると、あぁ今年ももうそんな時期かと思う。
普通の人たちが街のイルミネーションとかあちこちで流れるクリスマスソングでそれを感じるように
俺はそんな質問でクリスマスが近づいてきたこと感じる。
もう何年もそんな風に過ごしてきているから、それを特にサミシイとは思わんけど。
それに答えることが俺の仕事やし。

今年も雑誌の取材でこの質問を受けて、あぁもうそんな時期なんやなぁと思った。
せやけど、毎年毎年同じようなこと聞かれても、実際困るで。
そないたくさん俺の中にクリスマスのプランなんかあらへんよ。
好きなコと一緒におれればそれで充分やん。
しかも、理想のクリスマスを話したところで、どうせクリスマスは仕事してるし。
コンサートあること知ってるやん?
話すだけ無駄ちゃうん。
俺の中の横山候隆はそう言う。

だけど、求められてるもんをしっかりこなすのが仕事やし。
特に俺なんかおもろい事言うてなんぼなとこあるから。
毎年毎年言ってることが同じになり過ぎないように、同じ時期に出る雑誌でもまったく同じ事を言わへんように、だけど矛盾もしないように。
ファンの子が喜んでくれるように。
俺の中の横山裕はそう考える。

候隆と裕。
どっちも俺の名前。
候隆は親がつけてくれた俺の本名で、裕はウチの社長がつけてくれた芸名。
ウチの事務所のタレントはほとんどが本名で活動してるのに、俺だけ何故か芸名をつけられた。
理由はよう分からんけど、おそらく社長の気まぐれやろ。

横山候隆と横山裕。
どっちが本当の自分かって聞かれても困る。
横山裕として話すことは、横山候隆にとっては嘘のこともある。
だけど、そやからってデタラメなわけやないねん。
それは横山裕としての本音やから。
なんやろな、うまく説明出来へんけど、別に仕事の時は裕、プライベートは候隆って意識的に変えてるわけちゃうよ。
俺、そんな器用やないもん。
だけど、裕としての俺と候隆としての俺では矛盾するところもある
。 どっちも本当の俺やし、どっちも本当の俺やないかもしれん。
実際のところ自分でもよう分からん。
だけど、裕と候隆の矛盾に悩んだりはせえへんよ。
もう長年そんな風にやってきてるし、裕であれ候隆であれ俺はいつでも本音しか言ってないつもりやから。
はたから見たら、それが矛盾やと思われるんやろうけどな。

だけど。
このクリスマスの時期だけは、裕と候隆の間の矛盾で苦しむことがある。


「彼女はいない・・」

これはアイドルとして当然の答え。
ほんまは彼女がいても、「おらん」って答える。
「本当のことが知りたい」とか「いるならいるって言ってよ」ってファンの子には言われるけど、やっぱりそこだけは本当のことは言えへん。
それはアイドルとしての自分の立場を守ってるわけやなくて、いつも支えてくれるファンのコたちへの誠意。
どんなに本当のことが知りたいって言っても、やっぱ雑誌なんかで「彼女いますよ」なんて言ったら悲しむコの方が絶対多いやん。
俺らの仕事はファンのコに夢とか希望とか元気とかを与えることやから。
だから、やっぱり「彼女はいない」って言わなあかんねん。
それがファンの子への誠意やねん。
事務所の人からそう教え込まれたわけやないよ

仕事をしていくうちにファンの子の大切さとか気持ちとかに自分で気づいて、そう考えるようになった。 たぶん、俺以外のメンバーもそうやと思う。
もっとも俺は芸名がある分、感じてる罪悪感は他のメンバーより少ないかもしれんけど。
横山候隆には彼女がおっても「横山裕」には彼女はおらんて言えるから。
単なる言い訳かもしらんけどな。
だから普段「彼女はいない」って言うのにはそんなに抵抗はない。

せやけど、この時期は・・・
このクリスマスの時期だけは少しだけ胸が痛む。
この矛盾に苦しむ。

俺にはつきあって数年になる彼女がおる。
彼女は普通に会社勤めをしてる一般のコ。
俺の仕事は時間が不規則やし、休みだって決まった日にはとれない。
彼女は9時5時の仕事で土日は休み。
こんな俺らやから、1ヶ月や2ヶ月会えないことなんてザラにある。
彼女が学生やったころは深夜に会いに行ったり、平日も学校をサボって会ったりできたけど、今はそうゆうわけにもいかん。
俺もCDデビューしてからますます忙しなって、会える時間はさらに激減した。

だからって彼女は「会いたい」なんて我侭言ったりはせぇへんし。
俺の仕事のこともちゃんと理解して「がんばって」って言ってくれてる。
俺はそんな彼女の気持ちに甘えて、彼女にさみしい想いをさせてるってことはちゃんと分かってるから、そないマメやない俺が彼女にだけは毎日電話かメールをしてる。

俺らはクリスマスを一緒に過ごしたことがない。
クリスマスは毎年コンサートをやっているから。
せめて二人っきりじゃなくてもクリスマスに会えれば・・・と思い、彼女をコンサートに誘ったことがあったけど、「行かない」って断られた。
「あたしは会おうと思えばいつでも候隆に会えるし、電話で声だって聴ける。だけど、ファンの子達はコンサートでしか会えなくて、それなのにチケット取れないコだっているんだよ?
 あたしが行かなければその分一人のコにチケットがまわるわけでしょ?だったらあたしは行かない。」
どうして来てくれないのかと尋ねると、彼女はこう答えた。
アイドルの彼女としてはめちゃめちゃデキたコや。
俺はそれが彼女の100%の本心やないことくらい分かったけど、一度言い出したら聞かないことも分かってたので、それ以来誘うのはやめた。


「理想のクリスマスの過ごし方は?」
「今年のクリスマスの予定は?」
そう聞かれるたびに、俺の胸は痛む。
彼女と一緒にいてやれないことに。
さんざん理想のクリスマスをしゃべったあげく、「でも今年も彼女いないんで・・・」「クリスマスはコンサートやれるのが一番うれしい」ってしめるたびに思う。
ここで「ほんとは彼女とふたりっきりでいたい。それだけでいい。」って言えば、少しは彼女の淋しさを埋めてあげられるんじゃないかと・・・。

毎年クリスマスにコンサートをやらせてもらえるのはほんまにうれしい。
それは嘘やない。
いつも支えてくれるファンの子と一緒に楽しめるクリスマスは最高や。
それは横山裕の本音。

だけど。
クリスマスくらい彼女と一緒にいてやりたい。
ふたりっきりですごしたい。
いつもさみしい想いをさせてる分、クリスマスくらいは最高の時間を過ごさせてやりたい。
彼女にさみしい想いをさせたくない。
それが横山候隆の本音。

矛盾しあう裕と候隆。
この時ばかりはこの矛盾が苦しい。


そんなことを考えながらまた今日もクリスマスにちなんだ取材を受けた。
クリスマスデートファッションの特集らしくて、衣装なんてヒョウ柄のファーコート。
どこのセレブやねん。
俺は叶姉妹かっちゅーねん。
こんなんデートに着ていったらアイツ思いっきり引くんやろなぁ。

「うわぁ、また言うてもうたぁー・・・。」
インチキセレブの撮影が終わって、セットの隅でくつろいでると、取材を受けてたヤスがそう叫びながら戻ってきた。
「どないしてん?」
おれはペットボトルのお茶に口をつけながら聞いてやった。
「横山くん・・・。俺また取材で彼女おらへん言うてもうたんです。いや、分かってるんですよ!?彼女おるなんて言ったらあかんこと。」
「まぁ言ったところでそこはバッサリ切られるわな。」
「分かってるんですよ!!そやけど、やっぱどっかで彼女に罪悪感感じちゃって・・・。ただでさえ淋しい想いさせてるのに・・・。分かってるんですけどね・・・」
ヤスはため息をつきながら言った。

「そうかぁ・・・。」
俺は何にも言うてやれなかった。
ヤスはほんま人一倍素直なヤツやから、嘘をつけへんのや。
仕事やって思ってもどこか割り切れんとこがある。
恋愛の取材を受けたあとはいつもこうして自己嫌悪に陥ってる。
それがヤスのええとこでもあるんやけどな。

「横山くんはそう思うことないんですか?」
ふいにヤスは俺に振った。

「はぁ・・・!?俺は・・・っ」
コトバに詰まった。
俺も同じようなことを考えながら今日の取材を受けとった。
いつもなら「そこは割り切れよ」言えるのに、今日は言えへんかった。
「ヤス、おまえなぁ、毎度毎度そんなこと言うてるけど、そこは割り切れや。それが俺らの仕事なんやから。」
コトバに詰まってる俺の横から、ヒナが話に割り込んできた。
・・・助かった。

「村上くん。いや、分かってるんですよ。分かってるし、割り切ろうと思ってるんですけど・・・ねぇ。」
「まぁ、そこがヤスのいいとこでもあるからな。」
「村上くんはほんまオトナですよね。横山くんもそうですけど、なんでそんな簡単に割り切れるんですか?」
「まぁ、仕事やからな。あとこればっかりは性格やろな。俺はむしろそんなんで罪悪感感じてるヤスの方が信じられへんで。」

ヒナは同い年の俺から見てもほんまオトナや。
仕事は仕事とさっぱりしすぎなくらい割り切ってる。
今の俺はヤスと一緒で割り切れてへん。
ヤスほど素直に顔にはださへんけどな。
だから、ヤスの気持ちが痛いほど分かる。

「ま、なんやかんや言うても、俺は今彼女おらへんしなー。」
ヒナはそう言い捨ててセットの中に入っていった。


クリスマスコンサートを一週間後に控えた土曜日。
久しぶりに仕事が早く終わったので、すぐに彼女と連絡をとって会うことにした。
彼女に会うのはもう3ヶ月ぶりくらい。
夏から秋にかけてはほんま忙しくて、全然逢えなかったから。
俺は家に戻る時間も惜しくて、仕事場から彼女の部屋に直行した。

「候隆!ひさしぶりー!!」
チャイムを鳴らすと、彼女は勢いよくドアを開けた。
久しぶりに見る彼女の姿。
前に逢った時よりだいぶ髪がのびた。
それが逢えなかった時間の長さを物語ってるようで、胸が締め付けられた。

「久しぶり。ずっと逢えへんくてごめんな。」
俺は彼女を抱きしめた。
久しぶりに感じる彼女のぬくもり。
俺の心がスーっと軽くなっていくのを感じた。
この時だけは俺の中に横山裕はいない。
ただのヨコヤマキミタカに戻れる瞬間。


「なんやお前、俺の出てる雑誌買うてんのか!?」
彼女の部屋に上がると、テーブルの上にはKinkiさんが表紙の雑誌が置いてあった。
「あぁ、うん。久しぶりにちょっと買ってみた。」
「逢えへんかわりに俺のかっこいい写真見て癒されてたっちゅーわけか。」
俺はニヤッと笑い、雑誌をペラペラとめくった。
この前受けたクリスマスの取材のヤツやった。

「何言ってんの!候隆が思いっきしヘンなカッコしてるから、笑ってやろうと思って買っただけだよー。」
彼女はそう言って俺の横に座り、俺の持ってる雑誌を覗き込んだ。
「これこれ!!なんやねんこれ!!」
彼女が馴れへん大阪弁話しながらそのページを指差した。
「どこのセレブか思たわ!ヒョウ柄のコートって!全然キャラちゃうやん!!
 本屋で立ち読みしながら吹き出してしまったやんか!こんなん着てデートに来られたら、あたしその場で帰るで!?」
彼女は可笑しそうに笑う。
「お前なぁ、ヘンな関西弁使うなやー。それに俺かて好きでこんなん着てんとちゃうわ!」
「ほんまー!?案外マンザラでもなさそうな顔してるじゃん!
 イマドキこんなん着てるの叶姉妹くらいだよ!?ほらほら「美香さん」って言ってみてよ!!」
「美香さん、あたくしたちは美容のことなら手を抜かなくてよ・・・ってアホか!?仕事でもないのにノッてしもたやんけ!」 「うはは〜、ノリ突っ込みだー。」
「お前がやらしたんやんけ!」
「今度さー、ほんとにこのコート着てきてよ!!これで街歩いたら意外に誰も寄ってこないかもよ!?怪しがって!あたしも隣歩きたくないもん!」
「そんなこと言うて、ほんまはかっこいい思てんとちゃうの!?正直に言いーや!」
「内くんは何着てもかっこいいよね!!絶対このヒョウ柄コートも似合うはず!!内くんがこれ着てたら間違いなくみんなついてくね!」
「おい、なんで内の話やねん!そりゃ内はかっこいいけどな・・・。俺のこともちょっとは誉めろや!」
「うそうそ、横山くんもかっこいいですよ!内くんには叶わんけどねー☆」
「まぁ、それは認めるわ・・・ってオイ!」
「またノリ突っ込みー!?」

俺たちは久々に逢ったにも関わらずそんなアホな話で笑いあった。
だけど、これが俺にとっては何よりも安らげる時間。

「でもさ、よく今日こんなはやく終わったねー!?来週からコンサートでしょ?」
「あぁ、そうなんやけどな。みんな忙しくてな、全員そろってリハできへんから、今日は早よ終わってん。
 ほら、ヒナとマルはドラマやし、すばるは舞台のリハで、内と亮はNEWSのコンサートもあるしな。
 ヒマなんは俺と安田と大倉だけなん。さすがに3人じゃリハにならんしな。」
「あぁ、なるほどね。なんかたいへんそうだね。」
「そうやなぁ。正直リハも不十分やし、本番こわいな。でもまぁ、こうしてお前と会えたしな。」
「うん。でも、候隆にとって今が大事な時だし。がんばってよ!ね。」
彼女は満面の笑顔で言った。
「あぁ・・。ごめんな。クリスマスも会われへんくて。」
「大丈夫だって!ほら、あたしだってイブは仕事だし!!淋しくなったらこのヒョウ柄コートの候隆と一緒にクリスマス過ごすから。」
「・・・やっぱりかっこいいと思てるやん。」
「うるさーいっ!」
彼女は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「うそやって。ほら、こっち向いて?」

俺はそっぽを向く彼女をそぉっと抱きしめた。
「候隆のあほ・・・。」
彼女は俺の胸に顔をうずめて言った。
「アホ言うヤツがアホなんやで?」
俺は少し微笑んで言う。
「もぉー・・・。バカ。」
彼女は顔を上げて俺を見つめた。
瞳にはうっすら涙をためてた。

「候隆・・・すきだよ。」

俺は愛してるの代わりに
彼女にそっとキスをした。
何度も何度もキスをした。




―12月25日。
俺たちのクリスマスコンサートは大盛況のうちに千秋楽をむかえた。
始まったと思ったらあっとゆう間の千秋楽。
夏は1ヶ月もやってるから、クリスマスの1週間の公演なんてほんとに短く感じる。


「おつかれー!!」
「マジ最高!!」
「メリークリスマス!!」
興奮さめやらずのメンバーは口々に叫びながらステージを降り、楽屋に戻る。
胸いっぱいの充実感と満足感と少しの淋しさ。
これが次につながる原動力。

ほてった身体のまま、俺はケータイを握り締め廊下に出た。
「ヨコどこ行くん?風呂はー?」
背後からヒナの声。
「おー、ちょっと電話してくる。」
俺はそっけなく答えた。
「おぅ、そうかー。打ち上げもあるからあんまり長くなんなやー。」
「おぅ。」
ヒナはどこにかけるかお見通しのようやった。

俺はセットなんかがおいてある倉庫に駆け込んで。
彼女の短縮を押す。

「候隆!?」
電話口から彼女の声。
「おぉ。今コンサート終わった。」

「そう!おつかれさまー!!」
「うん。」
「どう?盛り上がった?」
「そりゃもちろん!!関ジャニ8は最高で最強やからな!」
「あはは、自分で言う!?エイトのお笑い担当が!!」
「うっさいわ!」
「実はね、午前中松竹座の前通ったんだよー。女の子がいっぱいいた!」
「なんやねん、そやったら電話してくれりゃーよかったのに。」
「いや、ちょうどコンサート中みたいだったしさ。」
「そうかぁ。」
「うん。」

「これから打ち上げやねん。クリスマスに男ばっかで打ち上げっちゅ―のもどないやねんって感じやけどな」
「えー!?いいじゃん!男前の内くんとクリスマスの夜を過ごせるなんて、世の女の子なら涙もんだよ!もっとありがたがった方がいいよ!!」
「なんで、内やねん!俺にもファンの子おんで!!?ちょっとやけど」
「はは。ちょっとなんだ!?」
「内に比べたらな」
「ちゃんと分かってんじゃん!」
「うるさいわ。これでも昔は男前の裕くんって言われとってんけどなぁ〜」
俺はおどけて言った。
コンサート直後で、俺はまだテンションが上がりきってる。

“おーい、ヨコ!?スタッフさんがそろそろ風呂入って準備せぇ言うてるでー!!?”
ふと楽屋の方から俺を呼ぶヒナの声が聞こえた。
「おぉ、今行くー!」
俺は電話口に手のひらを当てて答えた。

「候隆・・・?」
「すまん、ヒナにそろそろ帰りの準備せぇ言われた。風呂も入らなあかんし、打ち上げもあるし・・・」
「ぅん、わかった。ほんとお疲れ様!打ち上げ楽しんできてね!」
「おぉ。ほな・・・な。」
そう言って俺は電話を切ろうとした。

「あ、候隆!」
電話口から呼び止める彼女の声。
「ん?」
「メリークリスマス!!」
「あ・・・・」
「言い忘れてた。」
「あぁ・・メリークリスマス。」
「うん!じゃあ、またね!」
そう言って、彼女の方から電話が切れた。

今年もこうして会えずにクリスマスが終わって行くんか・・・。

俺はちょっとさみしなって、そのままトボトボと風呂に向かった。
そして、とりあえず今日はめちゃくちゃ飲んでやろうと決めた。



打ち上げはおおいに盛り上がった。
コンサート本番以上に盛りあっがったかもしらん。
それもどうかと思うけど。笑
これがコンサートのMCやったら、絶対会場ドッカンドッカンやで。
まぁ、ステージでは言えへんような会話もあるけどな。
酒の力もあってか、マルの一発ネタも冴えまくり。
これをステージでやってくれりゃいいのに・・・とそこにいたみんなが思ってたに違いない。
これからはマルに酒飲ませてからステージに上げるか・・・。

そんな大盛り上がりの打ち上げは深夜にまで及んだ。
クリスマスということも手伝ってかついつい酒の量も多くなり、帰るころにはみんなフラフラやった。
まだ酒の飲めない内と大倉なんか、俺らの醜態を見て
「これがさっきまでコンサートやってた人らの姿か・・・」
「俺ら一応ジャニーズやのに・・・ファンのコ見たら泣くわ・・・」
とため息混じりに言ってた。
そんな二人に
「アホか!酒の前ではアイドルもジャニーズもただの酔っ払いじゃ!」
って言ってやった。
横からマルが「そうやそうや!」と口を挟み、すばるが「まぁ、お前らも飲めるようになったらわかるわ」と二人の背中をたたいていた。

打ち上げが終わって、俺はほろ酔いの頭でタクシーに乗った。
時計はもう12時を軽くまわっていた。
家が近い内と途中まであいのり。
タクシーの中でも俺は内相手にベラベラしゃべり倒してやった。
その挙句、まだまだ飲み足りない俺は「もう一件行かへん!?奢るで!?」って誘ってみたけど、
「俺、明日も早いんすよ!Newsのリハで朝一の新幹線で東京行かんとあかんくて。だから寝かせてください!!」
って簡単に断られた。
俺はあしたからちょっとはゆっくりできるけど、内はまだNewsコンを控えてるししょうがないと、さすがの俺も諦めた。
「お前、まだ若いのに大変やなぁ・・・。がんばれよ!!俺は応援してんで!!」
内がタクシーを降りる時、そう言ってやったら、内は苦笑いをしてやがった。

内を降ろしてしばらくで家に着いた。
タクシーのおっちゃんに金を払い、車を降りようとした時、家の前に人影が見えた。

「まさか・・・」

俺は慌ててタクシーを降り、その人影に走って近寄った。

「おまえ・・・っ!?」
「候隆・・・。」

彼女だった。

「来ちゃった。」
彼女は照れたように笑った。
頬が赤く染まってる。
「来ちゃった・・・っておまえ!?いつから!?」
俺は両手で彼女の頬にふれた。
氷のかたまりをさわっているかのように冷たかった。
「んー、2時間くらいかな。」
彼女は腕時計を見ながら笑った。
「それやったら電話の一本ぐらいしろや!こんなに冷えてまって・・・」
「打ち上げの邪魔したくなかったし・・。でもそろそろ終わるかなって思って来たんだけどね。エイトの打ち上げを甘くみちゃったかな。」
「お前なぁ・・こんな夜中に一人で・・・。ほんま危ないやんか。もう・・・。こんなにつめたなってるし。」
俺は彼女を強く抱きしめた。
冷えてる彼女の身体を俺の体温であっためてやりたかった。

「候隆・・・あったかぁい。」
「お前がつめた過ぎんねん。」
「そっかぁ・・」
「そっかぁじゃないよ。ほんまにもう。来るなら来る言えや。」
俺は彼女から身体を離して、彼女の瞳を見つめて言った。

「ほんとはね、大丈夫だと思ったの。クリスマスに会えないことくらい平気だって。今までだってクリスマスは会えなかったし。
 でもね、イルミネーションが輝く街を歩いてたら、どうしようもなく会いたくなって・・・。
 止められなかったんだ。我慢しなきゃって思っても無理だった。クリスマスだから候隆に会いたいって思った。松竹の前通ったのも、少しでも候隆を感じたいと思ったから。
 でね、ここで候隆がんばってるんだって思ったらだいぶ落ち着いたの。
 でも、電話で候隆の声聴いたらますます会いたくなって・・・そしたら、勝手に足が候隆の家へ向かってた。」
「そ・・・か。」
「ん。でももうクリスマス過ぎちゃったけどね・・・。」
彼女は少し淋しげに笑った。

俺はもう一度彼女を抱きしめた。

「淋しい想いさせてごめんな・・・。」
「・・・ん。」
「クリスマスやのに一緒におられへんくてごめんな・・・」
「・・・ん。・・もうこうやって逢えただけで充分だよ・・・。」

彼女も俺の身体をギュッと抱きしめた。

「・・・候隆?」
「んー?」
「あのコートは着てないんだね。」
「んー?」
「あの雑誌の・・・。ヒョウ柄の・・・」
「・・あぁ!着るわけないやん(笑)」
「ほんとはね・・・あのカッコの候隆めちゃめちゃかっこいいと思ったんだよ。だからあの雑誌買ったんだよ。
 あのカッコした候隆とクリスマスに一緒にデートできたら幸せだなぁ・・・って。たとえ行くのは地元のごはん屋さんでもね。」
「それ早よ言えや。」
「だってくやしかったんだもん・・・かっこいいなんて言うの。」
「・・・あほ。」
「あー。アホいうヤツがアホなんでしょ?」
「・・・そうやった(笑)」

俺たちは笑いながら顔を見合わせた。

「・・・25日は終わってもうたけど、俺らのクリスマスはまだ終わってへんで。」
「ん・・・」


―今が俺らだけのちょっと遅れてきたクリスマス・・・やからな。


end





*   *   *   *   *   *   *   *   *

初ヨコちょ小説です。
しかし・・・かなり駄文・・・。
せっかく初めてヨコで書いてみたのに、テーマもグダグダ、文章もグダグダで、しかも無駄に長いし、ほんと残念です。
自分の中ではとても悔いが残るお話になってしまいました・・・。

とうゆうことで、初すばる以外のエイトメン小説は、やっさんで書くかヨコで書くか迷ったのですが、結局ヨコで。
ここで書きたかったアイドルとしての自分と一人の男としての自分との間の矛盾に一番悩みそうなのはやっさんだと思ったんですが、やっさんは彼女のこと「お前」とか呼ばない気がして・・・。
この小説ではあまり女の子の名前を出したくないので、それだけを理由にやっさんではなくヨコになりました。笑
その名残で、すこしだけやっさんが友情出演してるんですねー。
もしやっさんで書いてたら全然違う印象の話になっていただろうなぁ・・・。

クリスマスの話なのにアップがお正月も過ぎ、1月も半ば・・・ってことは気にしないように!笑
このお話を思いついたのが12月25日だったのです。苦笑

ちなみにエイトの中で結婚するとしたら、あたしは断然ヨコユウですっ!!
絶対楽しい家庭になる!と思う!!
ヨコはすごい幸せにしてくれそう!!
ついでに恋人なら大倉くん!!
・・・すばるくんはハトコでいいです。
あの人を彼氏にしたら大変そうですもん。笑

2005.1.15

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+++BBS+++ 感想いただけると嬉しすぎて泣きます。